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この儚くも悲しき世界の中で・・・・ [ファンタジー]


「この街は、この地域は一種の結界で護られている。しかし、その結界は
相当古い時代に創られたものだ。当然綻びも出てくる。
今まではなんとか保ってきた。だからこそ、ここまで独自の文化が
続いてきたんだ。だが今!結界は、文化を護るとともに邪悪なモノを引き寄せている。
それが、『人斬り』の原因とも言える」
唖然とする聴衆達。やがて口々に意見を言い合う声が飛び交い始めた。
結界を壊すべきだ、このままにするべきだ、いやどこかに移住しよう。
原因は何だ等々・・・・・。


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「静まれ!!結界の綻びは、もう外の世界も調査済みだ。
何らかの手段が実行されるのも時間の問題であろう」
「なら、こちらか何らかの反応を示すべきでは?」
そうだ、そうだと言う声があちらこちらから飛ぶ。
「開国をせよと言うのか?」
頷く聴衆達。皆意見は同じのようだ。そこで火蓮が立ち上がった。
「こちらから開けられない理由は、わたくしが説明いたしましょう。
この結界は微弱ですが意志を持っています。今まで綻びつつも、結界が
壊れなかったのその意思が自己防衛をしたからです」
「一体どのような?」
「・・・・・・能力を持った、高い魔力を備えた類い稀なる
才能の持ち主を遣って、結界の綻びを一時的に『封印』していたのです」
一同が息をのむ。ありえない、そんな事なんて。
「その、能力者というのは誰なのですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
誰も答えようとはしない。
分からない、とは火蓮の立場上口には出来なかった。
「九鳳院美桜よ」
妖艶な声が、沈黙を突き破った。霧島あやめだった。
「そんな・・・・・・!?」
一番驚いているのは、火蓮だった。震えながら口元を覆う。
思わず座り込みそうになり、一葉に支えられた。
「大丈夫か・・・・?」
耳元で囁く一葉。火蓮はぎゅっと目を瞑り、微かに頷く。
「大丈夫です・・・から。それより、この場を」
ふっと力が抜け、ついに倒れてしまう。
ざわつく聴衆達は、さらに騒がしくなった。
その喧噪の中に、火蓮の影から何かが生まれた。


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