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この儚くも哀しき世界の中で・・・・ [ファンタジー]

また小説の投稿をサボってしまいました^^;
久しぶりに「この儚くも哀しき世界の中で・・・・」です。
暁月の屋敷の離れで暮らす美桜の元に新たな人物が現れます。
彼は・・・そうあの私の大好きなゲームの紫の袴の人です。
もちろん関係はありませんが(笑)
どうぞお楽しみ下さい。
『束の間のひととき、あなたにこの言葉が届きますように』


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第六章「青葉の季節 新たな出逢い」

季節は少しずつ流れ、屋敷の庭には青葉が芽吹いた。
爽やかな初夏の風が、疾風のように吹き抜けて行くのを
美桜はぼんやりと眺めていた。
『・・・・・この屋敷にやってきてもう二ヶ月目に入ろうとしている。
なのに、情報を掴むどころか分からないことが増えていくばかり・・・・』
あれから、聖司はたまに部屋を訪れてくれるようになった。
だが、他にも人がいるはずの屋敷は美桜のいる離れの方にまでは喧騒を届けない。

あの「神堂 平助」と言う少年は今何をしているのだろうか。
目覚めたばかりの私の手を握っていてくれたあの少年は。
まだこの屋敷の中にいるのだろうか。
空を見上げると、彼に出逢える気がして美桜は独り微笑んだ。

「なぜ、いつもそのような微笑みを見せようとはしない」
突然背後から声がした。冷たく、厳しい声が。
「えっ?」
驚いて振り返ると、一人の男が立っていた。切れ長の瞳に、漆黒の絹のような髪。
美しい女性のような外見を持ちつつも、紫紺の袴を着て
腰に刀を差したこの男は一体何者であろう。
「なぜ笑おうとしないと聞いている」
「え・・・・えっといけないことですか?」
はぁ・・・と深い溜め息をつき、
「悪いとは言ってねぇがよ。毎日毎日そんな暗い顔して楽しいのかって聞いてんだよ」
男は呆れながら言った。
「・・・・・・・・・・・・・仮にも、囚われの身ですからね」
長い沈黙の後、美桜はこう続けた。
「萎れた顔してなきゃいけないと言うか、早く屋敷に帰りたいというか。
でも帰れないんです。このままじゃ、私は帰れない。
毎日私だけが楽しいなんて、ばつが悪いじゃないですか」
「—————それは聖司のことか?ならお前は間違ってるな、確実に。
お前一人が幸せなんじゃねぇ。お前の笑顔が誰かを幸せにするんだろ?」
初対面でこんなことを言われたのは、初めてだ。
司さんや、神堂君は私が笑ったら喜んでくれるだろうか。
ふとそう想うと、美桜は笑った。
「私一人だけじゃなくて、世界には幾人もの幸せな人がいるんです。
でも、私は自分以外の近くにいる人が不幸になるのは
たとえ自分が幸せだとしても幸せとは言えない。
目の前にどんな永遠の幸せがあっても」
だから、と少女は続けた。
「どんないばらの道であっても、他人を傷つけて
自分が幸せになることは許されないんです」

シャランッ!涼やかな音が響き渡る。男が刀を抜いたのだ。
「・・・・もしお前が幸せを手に入れる資格が無いと言うなら————
その命俺に斬らさせてもらう!」
はぁ、と憂鬱なため息をつく。そして眼を閉じ、
「私が司さんの傍にいれば、司さんは傷付くばかりです。
もし貴方が私を斬ってくれると言うのなら、私も全力でお相手させて頂きます」
美桜は閉じていた瞳をゆっくりと開く。
両手を合わせ、少しずらすと左手から刀が生まれた。
「解放 暁月!!」
その刀が現世に生まれし時、辺りを舞う桜吹雪を
全て血に染め尽くしたと言う一振りの刀。
ざわめく桜の木々の中、二人の命を懸けた斬り結びが始まる。

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