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ある少年の追憶Ⅱ [小説]

影は、存在するが意識されない。
僕の心は、影となってゆく存在とともに
虚ろになっていった。
心を閉ざした僕は、食べる事も、
話す事も、やがては、歩く事さえままならなくなった。
自分の部屋のベッドの上で、
僕は、なぜ今になってこんな事になるのだろうと考えた。
『どうして・・・・・どうして僕ばかり
こんな事に・・・・!!   どうして!!!』
胸の中にある想いはたったそれだけだった。

ある日、ある男が尋ねてきた。
男は、自分は父と兄の使いだと言った。
そして、僕を迎えに来たと。
親戚達は、最初警戒していたが、
怪しい者でないと分かると、
早速僕を引き取る話し合いを始めてしまった。

そして僕は、何も知らされないまま、
親戚の家を出て、新しい街へやって来た。
これまで以上の悲劇が起こるとも知らずに・・・。

僕と月城ルリのメモリーズ [小説]

その日直樹はいつも放課後に行く森も
ピアノサロンにも行かず自分の部屋に戻った。
布団に顔を埋めているとだんだん眠くなって来る。
夕食まで寝ていよう、そう思っているうちに
直樹は眠りについていた。

「ーき  ーおき   ーなおき」
「ー直樹!!!」
シュンヤの呼ぶ声がする。
うっすらと目を開けると、ベッドの上に半分だけ乗って、
のぞき込んでいるシュンヤがいた。
「・・・・っ」
息を呑む直樹。
これじゃまるで押し倒されているみたいじゃないか。
くすっとシュンヤが笑う。
「おはよ。直樹。」
「ん・・・・・。おはよう・・・・・・。」
とりあえず、答えてみる。
「逢えた?彼女に??」
ベッドに乗ったままシュンヤが尋ねる。
直樹は頷いた。
そして、そっとシュンヤを押し退ける。
「あの娘は・・・・人形生命体(アンドロイド)だ。」
目を見開くシュンヤ。
「嘘だろ・・・・。」




僕と月城ルリのメモリーズ [小説]

「君は・・・・誰・・・・?」
直樹はつぶやいた。
彼女は口を開きかける。
「・・・・・・・・・・」
長い沈黙の後彼女は透明な声でつぶやく。
「私は・・・・・・誰なの・・・・・・?」
ふいにそよ風が吹いた。
彼女は直樹の方へ歩いて来た。
「・・・・・・来て。」
そして、手を取り走り出した。
「え?!あの・・・・・・。」
彼女は何も言わず走り続けた。
どれくらい走っただろう。
職員室の前、保健室の前、事務室の前を通り過ぎ、
ついには、理事長室のある別館まで来てしまった。
彼女は、何も言わずドアを開けた。
「おお、来たようじゃの。」
窓の前に立っていた老人が振り返る。
「理事長??」
直樹の頭の上にクエスチョンマークが
踊った。

「あの子はの、わしの孫じゃ。と言っても、
血は繋がってないがの。」
紅茶を飲みながら瑛蔵は話した。
「あの子は・・・・・、人形生命体(アンドロイド)じゃ。」
「ぇ・・・・・・・・。」
直樹は息をのんだ。
「ある雨の夜、森の中を散歩していたとき、
一人の少女が倒れておった。わしはその子に、
“ルリ”と名付けた。地球のように蒼く、
空のように、水のように、蒼く。
あの子の瞳は、蒼かったんじゃ。」
その瞳は今、空を見つめていた。
「黒沢君。頼みがある。
君はルリに初めて会った人間じゃ。
もしかすると、ルリは君を信じることができるかもしれない。
誰も信じる事の出来ないほどの傷を負った彼女
の心に・・・・・。」
「無理です!!!」
直樹は叫んだ。

      『僕は、自分を信じる事さえ出来ないのに!』





僕と月城ルリのメモリーズ [小説]


今日から、「僕と月城ルリのメモリーズ」を始めようと思います。
物語の展開は今まで一緒です。
まあ、つまり題名が変わっただけですヨ。(笑)

モノローグ;シュンヤ [小説]

 
    物心ついた頃からオレには秘密の力があった。
         人並み外れた聴力。
    離れた所にいる人間の仕草・呼吸までもが耳に届く。
         『つらかった』
     でも、誰にも気づかれたくなかった。
         だから笑っていた。
     ずっと、ずっと、ヘラヘラと
     笑っていれば世の中を渡っていけた。           

        『あの瞬間までは』
         驚いた。動揺した。
       ふと耳に入ったピアノの音は
     儚く 美しく 壮大で 見えない芯があった。
         『神のピアノ』
        オレが惚れたピアノは、
    今まで生きて来た中で初めて聴いたものだった。
        ずっと、聴いていたかった。
      退屈な日々の中で、あいつのピアノは
    綺麗な水のようにオレの体にしみ込んでいった。
    


        オレは問いかける 
       『真実はどこにある?』
         
       『真理はどこにある?』
        
     『オレが満足する音は何処にある?』

僕と月城ルリのプロローグ [小説]


授業中直樹はずっと転校生について考えていた。
今まで、シュンヤ以外の人と接触すると、
心が視えてしまうのでなるべく避けて来た彼にとって、
この現象は明らかにおかしかった。

(いや、直樹が信じらている人がもう二人いた。
だが、今はその話には触れない。)

ふっと窓の外を見ると落ち葉が風に舞っている。
直樹はその姿をじっと見つめた。
いつのまにか、チャイムが鳴っていた。
シュンヤが切羽詰まった表情で、
直樹の方へ振り返って来た。
「直樹!直樹!ヤバいよ!!!」
「なにが?」
「ピアノの音が聞こえるんだ!彼女かもしれない!!」
その瞬間直樹の体は走り出していた。

ピアノサロンの一室の前で彼は止まる。
中から、かすかなピアノの音がする。
多分これは、「幻想即興曲」であろう。
「こんな曲を弾くなんて・・・。」
直樹はふとつぶやいた。
そして、ドアノブに触れる。

ドアを開けると、秋の光に照らされた美しい少女と
黒いグランドピアノがそこにあった。
演奏を終えた彼女は、金色の光がまばゆい横顔を、
こちらに向ける。
その瞳は儚く、美しかった。
まるで透き通る水晶のように。
そして、とても哀しかった。
直樹はその瞳に吸い込まれそうになる。

「君は・・・・・誰・・・・?」
誰なんだ。直樹は心の奥深くからそう思った。
自分のこの瞳でも映せない心。



       『それが彼女の心だった。』

僕と月城ルリのプロローグ [小説]

ルリはピアノサロンで、グランドピアノを弾いていた。
曲はショパンのエチュード「革命」

星華学園に来てから半月。
ルリは毎日をピアノサロンで過ごしていた。
表向きはここの生徒だが、瑛蔵の計らいで、
授業には出なくても良かった。
頭の中に残るメモリーがルリをここへと導く。
指は鍵盤の上を踊るように叩く。
ルリは自然とピアノが好きになった。

弾き終えると、小さな満足感に包まれる。
遠くでチャイムが鳴る。
ルリは、次に弾く曲を同じ楽譜の、
「幻想即興曲」にした。

ゆっくりと息を吐く。
ルリの周りの空気が、きれいな水のように澄んでいった。
最初の一音が水の中に落ちた
雫のように響く。

その時だった。
彼が飛び込んで来たのは。

僕と月城ルリのプロローグ [小説]


「転校生?」
直樹は聞き返した。
「そう。すっげえ美人らしい・・・。
ピアノも巧いんだってさ。」
直樹が黙っていると、シュンヤは
「あれ?やきもち妬いてる?
かわいいなぁ。」
くすっと笑った。
直樹はため息をつく。
「別に・・・。妬いてないよ。」
「じゃあ、直樹。彼女と連弾しようとか思わないの?
オレは聴きたいけどなぁ・・・。」
シュンヤは口をとがらせた。

彼は直樹のピアノに惚れ込んでいる。
半年前のある日、
ピアノサロンで独りで弾いていたのを、
シュンヤがやって来て
『お前のピアノ、惚れたよ。
オレを校庭から、ここまで来させたのは
お前のその“神の音”だから。
    決めた!
誰もお前のピアノを聴いてなくても、
オレが一生聴き続ける!!』
それから毎日、シュンヤは直樹のところに通いつめた。
二人は、どんどん親しくなっていったのだ。

直樹は、シュンヤに問いかけた。
「そんなに聴きたいなら、どっかのクラスにでも探しにいけば?」
「それがさ!ピアノサロンに不定期に現れるらしいんだよ!」
「それって、幽霊?」
「いや、見かけた奴は何人もいるらしい・・・。」
直樹は一瞬、シュンヤの心を探りかけた。
しかし途中でやめる。
親友を疑って能力など使いたくない。
「なぁ、今度確かめにいこうぜ?
お前と彼女の連弾実現するかもしれないし。」

しかし、確かめにいく必要など無かったのだ。
この時直樹は知らなかった。
もう、運命の歯車が動き出している事を。





僕と月城ルリのプロローグ [小説]

あの白衣を着た男のもとから逃げ出した彼女は、
気がつくと森の中にいた。
ポチャン
空から雫が降って来る。
着ていた真っ白な服が雫を吸って重たくなる。
“ぁ・・・”
ふいに彼女の意識が遠くなった。

目が覚めると、そこは暖かい場所だった。
“え・・・。”
生きてる。
彼女はそう思った。
人工生命体である彼女だが、感覚は他の人間と一緒だった。
「おお。目が覚めたようじゃな。」
老人の声が聞こえる。
彼女は一瞬身構えた。
「まあまあ。そう警戒せんでもよい。お前さんは運良く助かったんだからの。」
やって来た老人はロマンスグレーだった。
背筋もピンとしているし、若々しい。
“ここ・・・・どこ・・・?”
老人は笑った。
「ここはの。星華学園じゃ。」
“星華・・・学園”
「そう。わしは星華学園の理事長 月城 瑛蔵(つきしろ  ようぞう)じゃ。
よろしくの。そういえば、お前さんは?」
“分からない・・・名前無いと思う・・・・・”
瑛蔵は考え込んだ。
「ふむ・・・。名前が無いか・・・。
なら、わしが付けてやろう。わしは孫もおらんし、名前を付けたのは初めてじゃ。
そうじゃのう・・・。ルリ・・・ルリはどうじゃ?」
綺麗な名前じゃろう?老人は笑った。
“ルリ・・・。”
「そう。お前は月城ルリじゃ。」

こうして彼女は一人の人間となった。


人物紹介 [小説]

何回か小説を載せてみたのですが、
とりあえずココで登場人物の整理でも・・・と思いました。

黒澤直樹
年齢・・・13歳
誕生日・・・5月21日
身長・・・158cm
趣味・・・読書.ピアノ.クラシック鑑賞
備考・・・心が読める

月城ルリ
年齢・・・およそ13歳
誕生日・・・11月19日
身長・・・155cm
製造番号・・・05−21A
特技・・・ピアノ
備考・・・人形生命体(アンドロイド)

ここからは、新キャラのプロフです。

神田シュンヤ
年齢・・・13歳
誕生日・・・12月12日
身長・・・158,5cm
趣味・・・パソコン
備考・・・耳が尋常でないほどよい。

弓川麻紀
年齢・・・13歳
誕生日・・・6月21日
身長・・・153cm
趣味・・・ヴァイオリン
備考・・・人の痛みを感じ癒せる。

佐津姫暁夜(さつき きょうや)
年齢・・・15歳
誕生日・・・3月17日
身長・・・173cm
趣味・・・なんでもできるので何がなんだか・・・。
備考・・・みんなの頼れる先輩だが、その正体は・・・。




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